視野が欠けて見える(失明の可能性がある病気)

失明は病気や外傷などによって視力を失った状態を指します。

人間は五感で受け取る情報のうち、約8割を視覚から得ていると言われています。そのため、視力の低下は日常生活に大きな影響を与えます。

失明には完全に光を失った状態だけでなく、視力低下により
社会生活が極めて困難になった状態
も含まれています。

WHO(世界保健機構)では失明を「視力が良い方の眼の矯正視力が0.05未満」と定義しています。

厚生労働省の障害等級認定では、眼球摘出で視力を失ったもの、光の明暗を弁別できる光覚弁、目の前の掌の動きを弁別できる手動弁、指の本数を弁別できる距離を計る指動弁などで分けられています。

ただし、障害等級認定されていない方にも
社会生活が極めて困難なケースが多い
ため、日本眼科医師会ではアメリカでの基準をもとに「良い方の眼の視力が0.1以下」の場合を「社会的失明」と定義しており、社会的失明の患者数約18万8,000人と推定されています。

事故などを原因として失明する場合もありますが、ここでは病気を原因とするものについて紹介しています。

監修者:玄 真
きたあやせよつば眼科 院長
玄 真

順天堂大学医学部を卒業後、大学病院をはじめとした医療機関で研鑽を積み、眼科専門医を取得し、2015年に『北あやせよつば眼科』を開院しました。
日常的な目の不調から、レーザー白内障手術のような専門性の高い治療まで、幅広い診療を提供しています。0歳の乳児からご高齢の方まで対応し、現在では遠方からも多くの患者様にご来院いただいています。
地域の皆さまが安心して質の高い医療を受けられるよう、一人ひとりの「目のかかりつけ医」として、誠実に診療にあたってまいります。

目次

失明を予防するために

日本人の失明率世界で最も低く、先進諸国と比べても半分程度の0.14%です。

ただし、日本人の失明原因として上位を占めている疾患の緑内障糖尿病網膜症多くの方がかかる病気です。

こうした病気は
健康診断や眼科検診で早期発見が可能
であり、適切な治療を行えば失明を予防することができます。

糖尿病などの基礎疾患を持っている方目に違和感がある方はできるだけ早く眼科を受診してください。

失明を予防するために

日本人の失明原因

2007年の厚生労働省研究班報告書では、下記のようになっています。

 

1位 緑内障 20.9%
2位 糖尿病網膜症 19.0%
3位 網膜色素変性 13.5%
4位 加齢黄斑変性 9.3%
5位 視神経萎縮・脈絡膜萎縮 8.6%
6位 高度近視 7.8%
7位 角膜疾患 3.4%
8位 白内障 3.2%
9位 その他 14.3%

日本人の失明原因

緑内障

日本人の40歳以上では20人に1人が緑内障であるとされており、失明原因の第1位緑内障です。

緑内障は眼球の内部を満たす房水の圧力が上昇して視神経を圧迫し、視野が欠けていき、
進行すると失明につながります。

正常眼圧ながら眼圧抵抗が弱く緑内障になるケースが最も多くなっています。

これは正常眼圧緑内障と呼ばれており、
眼圧だけを計測して安心してしまうのは早計です。

ほかに房水排出が妨げられて起こる開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、発達緑内障、外傷糖尿病が原因となる続発緑内障などがあります。

なお、視野の欠損という症状が現れますが、初期段階では脳が視覚情報を補完してしまうため、自覚症状として現れにくく注意が必要です。

糖尿病網膜症

糖尿病の三大合併症のひとつであり、日本人の失明原因では第2位とされています。

高血糖が続いて網膜の毛細血管にダメージが蓄積し、出血や栄養・酸素の不足などが起こって網膜剥離につながります。


初期の自覚症状がほとんどなく
いきなり大きな視野の欠けなどが起こることがあり、注意が必要です。

網膜色素変性症

網膜にある桿体細胞と錐体細胞という
資格細胞が失われていく遺伝性の疾患
です。

暗い場所で見えにくいという症状から、視野狭窄、大幅な視力低下、白内障などが起こり、視力を失います。

ただし、進行がとても緩やかですから、定期的な受診で経過観察していくことがとても重要です。

加齢黄斑変性症

網膜の中でも「見る」機能の中心を担っている部分が黄斑です。

欧米では加齢黄斑変性が失明原因の第1位であり、光や色をある程度感じることはできても、なにかをしっかり見ることができなくなるため、文字なども読めなくなる社会的失明が起こりやすい病気です。

 

組織が萎縮する萎縮型と、滲出液によってダメージを受ける滲出型に分けられます。滲出型ではもろい新生血管による出血によって黄斑がダメージを受けます。

高度近視

眼球が前後方面に長くなってしまい、網膜の手前で焦点を結ぶため ピントが合わなくなっている状態です。 眼鏡などによる矯正もできず、病的近視とも呼ばれています。 高度近視になると網膜や脈絡膜に負荷がかかるため組織が薄くなり、はがれやすくなってしまいます。

網膜剥離

網膜に裂孔という孔があいて、そこから水が入り込んで網膜がはがれてしまった状態です。

加齢によって硝子体が萎縮して網膜を引っ張ることで起こることが多くほかに外傷などによる強い衝撃糖尿病網膜症などの病気などによって引き起こされます。

白内障

世界的には白内障が失明原因の上位を占めていますが、日本では安全性の高い手術が健康保険で受けられるため、白内障による失明は多くありません。

ただし、「年をとれば白内障になるのは仕方がない」と放置すると、緑内障や加齢黄斑変性症を見逃してしまう可能性があり、それによって失明するリスクがあります。

眼科を受診して総合的に目の状態を確認してもらいましょう。

網膜静脈閉塞症

網膜静脈閉塞症

網膜静脈閉塞症の原因

網膜で動脈硬化が起こると交差する静脈が圧迫されて血行が阻害され、血栓ができて
静脈を詰まらせることがあります。

それによって眼底出血網膜のむくみが起こっている状態です。

網膜静脈閉塞症の症状

視力低下に加えて、出血している部分が黒く欠けているように見えます。

むくみ出血が起こっている場所により
症状は大きく異なり
、「見る」ために重要な黄斑にむくみなどが起こると急激に視力が低下しますし、網膜中心静脈が詰まった場合には網膜全体に影響が現れます。

網膜静脈閉塞症の治療

抗VEGF薬を硝子体注射により出血やむくみを抑制し、レーザー光凝固術でダメージを受けた網膜を焼き付けて病巣が広がるのを防ぎ、新生血管発生を予防します。

網膜剥離

網膜に裂孔という裂け目ができ、網膜がはがれてしまった状態です。

網膜が剥離してしまうとその部分が見えなくなり、進行すると残された部分の剥離が起こって失明につながる可能性があります。

 

加齢などで硝子体が萎縮して網膜を引っ張り、その結果、網膜に裂け目(裂孔)ができて網膜がはがれてしまうのが網膜剥離です。

その他、外部からの打撃などで引き起こされることがあります。

網膜は剥離することで視覚組織としての役割を果たせなくなり、重度の視覚障害失明に至るリスクがあります。

網膜剥離の原因

主に加齢で硝子体が萎縮することで網膜が引っ張られて裂け、そこに水分が入り込んで剥離が起こりますが、網膜症などの病気打撲などの外傷が原因となる場合もあります。

網膜剥離の症状

睫毛内反・睫毛乱生は、乳幼児にみられる場合は成長とともに治る可能性がありますが、加齢などで後天的に起こる場合は手術を行い、余分な箇所を除去します。

 

網膜剥離の治療

硝子体が網膜を引っ張る力を弱めるために、バックリング手術を行った上で裂孔の周囲を凝固させて孔をふさぎ、剥離がそれ以上進むのを防ぎます。

裂孔が大きい、あるいは硝子体内に増殖組織という膜ができてしまっている場合には、硝子体手術が必要になります。

この場合は、硝子体を除去して裂孔を凝固させてガスを注入し、ガス圧で剥離した網膜を戻す手術になります。

眼底出血(硝子体出血)

網膜で起こった出血や、それが硝子体におよんでいる状態です。

眼底出血(硝子体出血)の原因

網膜剥離や外傷、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、高血圧症、高脂血症、腎臓病などによって網膜の血流障害が起こり、出血や新生血管の発生による血液や成分の滲出が起こっています。

眼底出血(硝子体出血)の症状

視界のかすみ、ゆがみ、飛蚊症などが現れ、出血した場所や範囲により視界の欠けが生じる場合もあります。

眼底出血(硝子体出血)の治療

原因となる疾患が多いため、それに合わせた治療が必要です。

糖尿病高血圧症など全身性の疾患であれば、その治療も重要です。

軽度の眼底出血では抗VEGF薬の注射が主に行われ、レーザー光凝固術硝子体手術が必要になるケースもあります。

CONTACT ご予約・お問い合わせ案内

きたあやせよつば眼科では、WEBやLINEからのご予約を受け付けております。
事前にご予約いただくことで、当日の待ち時間を短縮し、スムーズに診療を受けていただけます。
ご予約がなくても診療は可能ですので、お気軽にご来院ください。

この記事の監修者
きたあやせよつば眼科 院長
玄 真

順天堂大学医学部を卒業後、大学病院をはじめとした医療機関で研鑽を積み、眼科専門医を取得し、2015年に『北あやせよつば眼科』を開院しました。
日常的な目の不調から、レーザー白内障手術のような専門性の高い治療まで、幅広い診療を提供しています。0歳の乳児からご高齢の方まで対応し、現在では遠方からも多くの患者様にご来院いただいています。
地域の皆さまが安心して質の高い医療を受けられるよう、一人ひとりの「目のかかりつけ医」として、誠実に診療にあたってまいります。

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